臨床心理学
1.発展の軌跡 ゲシュタルト療法は フリッツ・パールズ(Fritz Perls) によって創始されました。 パールズはベルリンで生まれ、医学を学んだのち、戦後アメリカに移住。ニューヨークやカリフォルニアで研究所を設立し、晩年はカナダでコミュニティ作りに取…
1.クライエント中心療法の発展 カール・ロジャースは、ニューヨーク州ローチェスター児童相談所で12年間勤務する中で、従来の「診断と指導」を中心とした介入に疑問を抱くようになりました。 その背景には、**「クライエントの自発性や健康に向かう力をどう…
1.人間への注目① ●心理学と社会に対する疑問 20世紀前半、アメリカ心理学の主流は行動主義でした。そこでは「心の中を内省で観察する」ことは否定され、人間の行動は遺伝と環境によって決定されると考えられました。 一方、精神分析は「人は性や攻撃の衝動…
精神力動アプローチの現在と新たな展開 ●短期力動的心理療法 近年では、レスター・ルボルスキーやジョージ・シルバーシャッツ、さらにダオアナ・フォーシャらによって展開された短期精神力動的心理療法が注目されています。 従来の数年単位の長期療法と比べ…
●修正感情体験 修正感情体験とは、フランツ・アレキサンダーとトーマス・フレンチによる古典的精神分析からの修正の1つです。クライエントがこれまで積み重ねてきたトラウマ的な対人関係を、セラピストとの間でより健康的な関係へと置き換えることを目的とし…
1.アセスメント面接 精神分析ではまず「分析可能性」を吟味します。フロイト以来、分析可能性についてはさまざまな議論があり、以下のような要素が重要とされています。 精神病でないこと 不安神経症(現在の不安障害)ではないこと 自分をある程度客観的に…
1.はじめに 古典的精神分析は、個人内の欲動やファンタジーに焦点を当て、それら無意識過程を意識化することを中心に据えてきました。これに対して、北米で発展した現代の精神分析は、より社会的・関係論的な文脈を重視します。 たとえば対象関係論では、「…
フロイトの理論は、その後の心理学者たちによって多様に発展していきました。大きく分けると、社会的文脈や対人関係を重視する方向と、より幼児期の早い段階に原因を探る方向です。ここでは、代表的な流れを整理してみます。 --- ネオフロイディアンと自我心…
●男根期(3歳〜6歳) この時期、男児も女児も性的願望は生殖器に焦点化され、異性への関心が高まります。とくに異性の親に対する性的好奇心が強まります。 男の子は母親を独占しようとしますが、同時に父親の存在に気づきます。母親をめぐる競争相手として父…
1.心の構造論 フロイトは1923年に『自我とエス』を発表し、心を「エス」「自我」「超自我」の3つの領域からなる構造として捉えました。 エス(Es):無意識の領域にあり、本能的で欲求充足的な「したい」という衝動の主体。 超自我(Über-Ich):両親や社会…
1.精神力動アプローチの前史 精神力動アプローチの源流は、18世紀末のヨーロッパにさかのぼります。 1775年、悪魔祓い師ガスナーと医師メスメルが対立し、メスメルが「動物磁気」と呼ばれる神秘的エネルギーによる治療を公開したことが、力動精神医学の始ま…
1.はじめに 精神力動アプローチとは、ジークムント・フロイトによって19世紀末に確立された精神分析と、その後の後継者たちによる修正・発展を含む理論と方法の総称です。 「力動」という言葉は、心の中で相反する気持ちが葛藤したり、それを抑え込む働きや…
1.不安障害(Anxiety Disorders) 成人の約9%が経験するといわれています。不安の対象によって性質や不適応行動の程度が異なるため、いくつかの診断分類があります。 社会恐怖(社交不安障害) 対人場面で強い恐怖を感じるために著しい苦痛が生じ、社会生…
1.何が異常で、何が正常か? 心理的問題を理解するうえで、「正常」と「異常」の線引きは簡単ではありません。 主な基準としては、以下の視点があります。 統計的基準:発生頻度が極めてまれかどうか 心理的苦痛:不安やうつなどの主観的な苦痛があるか 社…
1.パーソナリティを測る方法とは? 心理アセスメントにおいて、パーソナリティ(人格)の理解は極めて重要です。 クライエントの行動や思考のパターン、対人傾向、心のクセなどを把握することで、 より的確な支援や介入の方針を立てることができます。 パー…
1.心理アセスメントの最前線 心理アセスメントの最初のステップは、クライエントとの面接です。 この面接において最も重要なのは、以下の2つの姿勢です: ラポール(信頼関係)を築くこと 傾聴的な態度を保ち続けること 心理アセスメント面接では、次のよう…
1.心理アセスメントとは 臨床心理士の最初の作業は、心理アセスメントです。 心理アセスメントとは、クライエントの心理的特徴や状態、背景、行動傾向などを多角的・客観的に把握するためのプロセスや手法の総称です。 この作業では、クライエントの抱える…
臨床心理学の世界は、単に「治療」だけにとどまりません。人のこころに向き合い、より良く生きるための支援を模索するなかで、その活動は広がりと深まりを見せてきました。 まず、研究活動は臨床心理学の土台をつくる重要な仕事です。たとえば、「どの症状に…
3.今日の発展と課題 アメリカは多民族国家であるにもかかわらず、これまで広く用いられてきた心理学の理論は、多くの場合、中産階級の白人クライアントを前提として構築されてきました。そこでは、文化や民族による違い――価値観、家族観、言語、宗教観とい…
はじめに:人の苦しみと向き合う「こころの歴史」 本記事では、「臨床心理学入門」シリーズ第4回として、臨床心理学の“歴史”をテーマにお届けします。 人はいつの時代も、悩みや苦しみとともに生きてきました。 臨床心理学の歴史をたどることは、人が「どう…
はじめに:人の心に寄り添う“実践の心理学” 本記事では、「臨床心理学入門」シリーズの第3回として、臨床心理学の定義や特徴、他分野との違い、そして直面している課題についてまとめてみました。 --- 臨床心理学の定義と特徴 アメリカ心理学会によれば、臨…
はじめに:21世紀は“心の時代” 「21世紀は心の時代だ」とよく言われます。モノの豊かさを求める時代から、内面的な充実や、自分らしい生き方を重視する時代へと、私たちの価値観は変化してきました。 確かに、今でも「経済的な豊かさ=幸福」と考える人もい…
私たちはなぜ心理学に惹かれるのでしょうか。 臨床心理学の学びは、「自分を知る」ことから始まります。 この章では、日常の中にある心の動きから、臨床心理学の入り口を見ていきます。 --- 私たちの日常生活では、心理的健康や成長を促進する出来事もあれば…