フリーターという選択の心理──「やりたいこと」があるということ
キャリアについて考えるとき、最近とくに気になるのが「フリーター」として生きる人の心理だ。
決して珍しい存在ではないし、かつての自分にも少しその気配があった気がする。
フリーターに多く見られる心理には、主に2つの特徴があるという。
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モラトリアムという一時停止の時間
ひとつ目は、「モラトリアム的な心理」。
つまり、自由を確保しつつ、人生の大きな決断を先送りにする心のあり方だ。
「やりたいことがまだ見つからない。だから今はとりあえずフリーターで…」
そういった言葉を耳にしたことはないだろうか。
だがこの“とりあえず”が、気づけば5年、10年と続いてしまうこともある。
この背景には、青年期の発達課題でもある「アイデンティティの確立」が大きく関わっている。
自分は何者なのか。何をして生きていくのか。
こうした問いへの明確な答えが出せず、結果的に時間だけが過ぎていく。
だが、それは決して“甘え”ではなく、現代社会においてはごく自然な葛藤でもある。
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「やりたいこと思考」という価値観
もうひとつ注目すべきは、「やりたいこと思考」だ。
これは特定の職種や企業に縛られず、自分の興味や関心を軸に仕事を選ぼうとする考え方。
自由度の高い働き方を尊重する姿勢は、とても現代的だ。
ただし、キャリアの“軸”が曖昧になることで、方向性を見失いがちにもなる。
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キャリア観の変化:静的 vs 動的
キャリアの捉え方には、大きく分けて2つの視点がある。
静的な視点
例:ジョブマッチング理論など。
個人の性格や能力に適した職業をあらかじめ決めるスタイルだ。
適性検査の結果で配属先が決まる、というのがその典型。
動的な視点
時間の中で人は変化・成長するという前提に立つ。
たとえば、いくつかの部署を経験させながら、可能性を探るような配置の仕方である。
現代のような変化の激しい社会──VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代においては、
当然ながら後者の動的な視点が重視されてきている。
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キャリアを「自分で設計する」時代に起きていること
近年では「キャリアは自分でデザインするもの」という考え方が広まりつつある。
個人の主体性が重視されるのは素晴らしいことだ。
だが、その自由は時として負担にもなる。
「選択肢が多すぎて決められない」──いわゆる選択のパラドックス。
「自分で決めたのだから、失敗はすべて自己責任だ」という過剰なプレッシャー。
自由なキャリア選択の裏には、そうした影の側面も確かに存在している。
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クランボルツの「計画された偶発性理論」から学ぶこと
キャリアを考えるうえで、クランボルツの理論は示唆に富んでいる。
彼は「偶然の出来事こそがキャリアを切り拓くチャンスになる」と考えた。
では、そのチャンスをつかむには何が必要なのか?
彼は次の5つのスキルを挙げている。
好奇心:新しいことに興味を持ち、学び続ける姿勢
粘り強さ:うまくいかなくても諦めない力
柔軟性:予想外の変化を受け入れ、活かす力
楽観性:ポジティブに物事をとらえる視点
冒険心:失敗を恐れず、一歩を踏み出す勇気
これらの力は、偶然を偶然のままで終わらせず、意味ある「出来事」に変えていく鍵になる。
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キャリア形成を支える6つの因子
さらに、キャリア形成において重要とされる因子が6つある。
1. 未知への挑戦:新しい経験に前向きであること
2. 達成動機:努力して何かを成し遂げようとする意欲
3. 構想力:将来のビジョンを描く力
4. 未来への信頼:自分や社会への前向きな期待
5. 過去の受容:失敗も含めて、自分の歩みを認める力
6. ネットワーク力:人とのつながりを活かす力
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自分で選ぶということは、責任を持つということ
今の時代、キャリアは誰かに決められるものではない。
自由に選べる代わりに、迷いや不安も抱える。
でも、だからこそ心理学は役に立つ。
自分の中にある価値観、過去の選択、そして未来への期待を
丁寧に見つめ直していくことで、キャリアの軸は少しずつ見えてくるはずだ。