導入
今回は、ジョン・マクレオッド著『物語としての心理療法』(原題:Narrative and Psychotherapy)の第1章冒頭「人びとの変容 ― 個人という概念に関する文化小史」を要約してみました。
心理療法はいつの時代も「人間とは何か」という問いと向き合ってきました。その問いは、文化や社会のあり方とともに変化しているようです。
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要約
第1章1 人びとの変容 ― 個人という概念に関する文化小史
ヨーロッパや北米などの高度に産業化された社会における文化は、以下の3段階を経て発展してきた。
第1段階(伝統文化):人びとは宗教や神話にもとづく規律に従って生活し、「個人」は共同体の中での役割を果たす存在として捉えられていた。
第2段階(近代社会):都市化が進み、宗教に代わって進歩や合理性への信頼が重視され、「自己を確立すべき主体」としての個人観が登場した。
第3段階(ポストモダン時代):近代的価値観への疑問が強まり、絶対的な真理や統一された自己像が揺らぎ、多様な価値観が併存する時代となっている。ただし、今後の方向性は定まっていない。
心理療法はこうした時代ごとの文化的風潮を背景に成立・発展してきた。心理療法が扱うのは、主に一人ひとりの生活上の問題であり、文化の変容はそのまま個人の経験や悩みにも反映される。つまり、「人として存在すること」の意味自体が時代とともに変わる中で、心理療法はその影響を受けながらも、逆に変化を促す力にもなっている。かつて宗教的な「魂の癒し」が精神分析へと移行したように、近代からポストモダンへの移行期にも同じような大きな変容が進行していると考えられる。
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あとがき
この章は、「個人とは何か?」という問いを歴史と文化の視点から読み解く重要な出発点でした。
次回は、さらにナラティヴ(物語)という視点がどのように人間理解や心理療法と結びついていくのかを見ていきたいと思います。
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