※本記事は、ミネルヴァ書房『福祉心理学』(渡部純夫・本郷一夫 著)をもとに学習・要約した内容です。専門用語をできる限り平易に解説し、学び直し層や社会人にも親しみやすくまとめています。
■ 増え続ける児童虐待──数字に現れない“声なき悲鳴”
近年、日本における児童虐待の相談件数は右肩上がりに増加しています。これは「虐待が急に増えた」というよりも、「社会の関心が高まり、見つけやすくなった」ことが背景にあります。
ただし、その陰には依然として“声なき虐待”が潜んでいます。虐待は家庭内で密かに行われるため、外部からは気づかれにくく、子ども自身も「これが普通なのかもしれない」と思ってしまうことが少なくありません。
■ 虐待の4類型──見えない“心の傷”もある
児童虐待は以下の4つに分類されます。
特に「心理的虐待」は見えづらく、周囲からの発見が難しい一方で、子どもの人格形成に大きな影響を与えることがあります。
■ 加害者は誰か?──“普通の親”が陥る背景
虐待の加害者は特別な“異常者”ではありません。多くは「追い詰められた親」です。
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経済的困窮
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育児ストレス
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孤立した子育て環境
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自身も虐待を経験している
こうした「背景的要因」が重なり合い、親自身の限界を超えたとき、虐待が始まってしまうケースが多いのです。
つまり、虐待は“個人の問題”ではなく、“社会の構造”にも起因する現象ともいえます。
■ 支援の実際──「子どもを守る」とはどういうことか?
児童相談所やスクールソーシャルワーカー、家庭支援センターなど、多くの専門職が連携しながら、虐待の早期発見と介入を行っています。
ただし、介入=“子どもを引き離す”ということではありません。
福祉心理学が重視するのは、「親子関係を切ること」ではなく、「関係の修復と再構築」を目指す視点です。
たとえば、以下のようなアプローチがとられます。
■ “虐待してしまった親”にこそ支援を──加害と被害のはざまで
虐待をした親に対して、「加害者」として断罪する社会的風潮は根強くあります。しかし、福祉心理学では次のような視点が重視されます。
「親もまた、“自分を支えてくれる誰か”を必要としている」
実際、支援の現場では、「親自身が適切な育児を学んだことがない」「助けを求める先を知らない」といったケースが多く見られます。親を孤立させるのではなく、「学び直しの機会」や「育て直しの関係性」をどう提供できるかが、支援者の腕の見せどころです。
■ 子どもを守るには、社会全体が“養育の一員”になること
虐待の防止は、専門職だけでなく、地域や社会全体の役割でもあります。
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異変に気づいたら迷わず相談する勇気
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子育てに悩む家庭に“おせっかい”を届ける社会
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「困っている親に手を差し伸べる文化」
こうした仕組みがあってこそ、虐待の芽は早期に摘まれ、親子がやり直す機会も得られます。
■ まとめ:親子関係の再生は“非難”ではなく“まなざし”から
虐待の問題を「親の責任」と切り捨てるのではなく、「親もまた支援の対象」として見る。これが福祉心理学の根本的なスタンスです。
子どもを守るには、“支えを必要とする親”にも手を差し伸べる。
非難ではなく、回復への“まなざし”から始めること。
そこに、ほんとうの意味での“福祉”があるのではないでしょうか。
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