心理学勉強記録

このブログは、心理学を学んでいる私が、日々のテキストを自分なりに解釈しながらアウトプットしていく記録です。 主に自分自身の復習用として作成していますが、心理学に興味のある方、これから学び始める方にとっても、何かしら参考になる部分があれば幸いです。

福祉心理学入門⑤ 夫婦間・カップル間暴力への支援──DV被害の“見えない連鎖”を断ち切るには

※本記事は、ミネルヴァ書房『福祉心理学』(渡部純夫・本郷一夫 著)をもとに学習・要約したものです。
家庭内暴力(DV)の構造と心理支援の必要性について、初学者にも分かりやすく整理しています。


■ DVは“家庭内の問題”ではない──支援の視点へ

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」とは言いますが、家庭内の暴力(ドメスティック・バイオレンス:DV)は、もはや個人の問題ではありません。
暴力の継続が身体・精神に与えるダメージ、子どもへの影響、そして社会的孤立。こうした問題は公共の支援
を要する深刻な課題です。

DVは、単なる「口論」ではなく、次のような特徴をもつ**“支配の構造”**です:

  • 殴る・蹴るなどの身体的暴力

  • 無視・侮辱などの精神的暴力

  • 経済的な自由の制限

  • 性的強要


■ なぜ逃げられない?──心理的支配のメカニズム

多くの人が抱く疑問に「なぜ被害者は逃げないのか?」というものがあります。
しかしDVは、暴力→謝罪→優しさ→再暴力……という**“サイクル”**を形成し、被害者の判断力や自己効力感を奪っていきます。

これは、いわば**「心理的監禁」**です。

  • 加害者の支配的な言葉:「お前のためだ」「出ていったら後悔する」

  • 被害者の内面変化:「自分が悪いのでは」「誰にも頼れない」

このようにして、逃げられない構造ができあがっていくのです。


■ 子どもへの影響──“目撃”もまた暴力である

DVは、夫婦間・恋人間だけの問題ではありません。
家庭内暴力を目撃した子どもにも深刻な影響が及びます。

  • 不安やうつ、攻撃的行動の増加

  • 愛着形成や信頼関係の障害

  • 成長後に同様の暴力関係を再生産するリスク

つまりDVは、**次世代に連鎖しやすい“社会的暴力”**でもあるのです。


■ 支援の基本は「安全確保」から──DV防止法とシェルター

日本では2001年に「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律(DV防止法)」が施行され、制度的な支援体制が整いつつあります。

主な支援内容は以下のとおり:

  • 一時保護施設(シェルター)の提供

  • 保護命令(接近禁止命令など)

  • 相談支援(福祉機関・民間団体)

  • 子どもの保護支援

特に重要なのは、まず“逃げられる場所”があること
安全を確保し、冷静に将来を見通す環境を整えることが最優先です。


■ 支援者の姿勢──「なぜ逃げなかったのか?」ではなく…

被害者に対しては、「なぜ逃げなかったのか?」という問いではなく、

「今、あなたがここに来てくれて本当に良かった」

という言葉が求められます。

支援者は以下の点を意識する必要があります:

  • 被害者のペースを尊重する

  • 判断や決断を急がせない

  • 罪悪感を抱かせない

これは単なる福祉の知識ではなく、信頼関係の構築と心理的ケアが問われる専門的支援です。


■ DV加害者への支援──責任を問うだけでは終わらない

DVへの支援は被害者だけでなく、加害者側の更生支援も重要なテーマです。
加害者の多くは、自身が過去に暴力的環境で育ったケースも多く、問題行動が内面の傷から来ている場合もあります。

  • 加害者プログラム(怒りのコントロール、自己洞察)

  • 家族との関係再構築支援(場合によっては制限つき)

  • 継続的な心理的支援やグループワーク

「加害者もまた支援が必要な存在」として捉える視点は、暴力の根絶と再発防止に向けて不可欠なのです。


■ DV支援の本質──“関係性の回復”を支えるまなざし

DVは、単に「殴られた・殴った」という物理的な事件ではありません。
それは、人と人との関係性が壊れ、信頼が損なわれ、“支配”と“恐怖”が支配する空間です。

福祉心理学が果たす役割は、被害者を守ることにとどまらず、

  • 傷ついた心の再生

  • 社会との再接続

  • 安全な関係性の構築

を支える支援を行うことです。

そのためには、支援者自身が**「関係性の専門家」**としてのまなざしを持つことが求められています。