※本記事は、ミネルヴァ書房『福祉心理学』(渡部純夫・本郷一夫 著)をもとに学習・要約したものです。
家庭内暴力(DV)の構造と心理支援の必要性について、初学者にも分かりやすく整理しています。
■ DVは“家庭内の問題”ではない──支援の視点へ
「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」とは言いますが、家庭内の暴力(ドメスティック・バイオレンス:DV)は、もはや個人の問題ではありません。
暴力の継続が身体・精神に与えるダメージ、子どもへの影響、そして社会的孤立。こうした問題は公共の支援を要する深刻な課題です。
DVは、単なる「口論」ではなく、次のような特徴をもつ**“支配の構造”**です:
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殴る・蹴るなどの身体的暴力
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無視・侮辱などの精神的暴力
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経済的な自由の制限
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性的強要
■ なぜ逃げられない?──心理的支配のメカニズム
多くの人が抱く疑問に「なぜ被害者は逃げないのか?」というものがあります。
しかしDVは、暴力→謝罪→優しさ→再暴力……という**“サイクル”**を形成し、被害者の判断力や自己効力感を奪っていきます。
これは、いわば**「心理的監禁」**です。
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加害者の支配的な言葉:「お前のためだ」「出ていったら後悔する」
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被害者の内面変化:「自分が悪いのでは」「誰にも頼れない」
このようにして、逃げられない構造ができあがっていくのです。
■ 子どもへの影響──“目撃”もまた暴力である
DVは、夫婦間・恋人間だけの問題ではありません。
家庭内暴力を目撃した子どもにも深刻な影響が及びます。
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不安やうつ、攻撃的行動の増加
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愛着形成や信頼関係の障害
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成長後に同様の暴力関係を再生産するリスク
つまりDVは、**次世代に連鎖しやすい“社会的暴力”**でもあるのです。
■ 支援の基本は「安全確保」から──DV防止法とシェルター
日本では2001年に「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律(DV防止法)」が施行され、制度的な支援体制が整いつつあります。
主な支援内容は以下のとおり:
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一時保護施設(シェルター)の提供
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保護命令(接近禁止命令など)
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相談支援(福祉機関・民間団体)
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子どもの保護支援
特に重要なのは、まず“逃げられる場所”があること。
安全を確保し、冷静に将来を見通す環境を整えることが最優先です。
■ 支援者の姿勢──「なぜ逃げなかったのか?」ではなく…
被害者に対しては、「なぜ逃げなかったのか?」という問いではなく、
「今、あなたがここに来てくれて本当に良かった」
という言葉が求められます。
支援者は以下の点を意識する必要があります:
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被害者のペースを尊重する
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判断や決断を急がせない
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罪悪感を抱かせない
これは単なる福祉の知識ではなく、信頼関係の構築と心理的ケアが問われる専門的支援です。
■ DV加害者への支援──責任を問うだけでは終わらない
DVへの支援は被害者だけでなく、加害者側の更生支援も重要なテーマです。
加害者の多くは、自身が過去に暴力的環境で育ったケースも多く、問題行動が内面の傷から来ている場合もあります。
「加害者もまた支援が必要な存在」として捉える視点は、暴力の根絶と再発防止に向けて不可欠なのです。
■ DV支援の本質──“関係性の回復”を支えるまなざし
DVは、単に「殴られた・殴った」という物理的な事件ではありません。
それは、人と人との関係性が壊れ、信頼が損なわれ、“支配”と“恐怖”が支配する空間です。
福祉心理学が果たす役割は、被害者を守ることにとどまらず、
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傷ついた心の再生
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社会との再接続
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安全な関係性の構築
を支える支援を行うことです。
そのためには、支援者自身が**「関係性の専門家」**としてのまなざしを持つことが求められています。
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福祉心理学
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DV支援
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心理的支援