※本記事は、ミネルヴァ書房『福祉心理学』(渡部純夫・本郷一夫 著)をもとに学習・要約したものです。
■ 障害を“個人の問題”にしない視点
かつて「障害」は個人の欠損や異常と捉えられ、「治す」対象とされてきました。
しかし現代の福祉心理学では、**障害は「社会との関係性」から生まれる」**という認識が広がっています。
これは「医学モデル」から「社会モデル」への転換を意味します。
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医学モデル:障害=本人の機能障害
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社会モデル:障害=社会環境が生む“生きづらさ”
たとえば車椅子の人が困るのは「歩けない」ことではなく、「段差がある」ことです。
■ ICIDHからICFへ──障害概念の進化
WHO(世界保健機関)は2001年、障害の国際的な定義を「ICIDH(国際障害分類)」から「ICF(国際生活機能分類)」へと刷新しました。
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ICIDH:障害=機能障害・能力障害・社会的不利
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ICF:障害=生活機能と障害/背景因子(環境・個人)
ICFは、障害を**「個人の特性+社会的文脈の相互作用」**と捉える枠組みであり、福祉心理学でもこの考え方が重視されています。
■ 精神障害と認知症──「見えにくい障害」への理解
障害には身体的なものだけでなく、**精神障害や認知症などの“見えにくい障害”**も含まれます。
◯ 精神障害
◯ 認知症
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高齢化により患者数増加中
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記憶障害だけでなく、生活全体への影響が深刻
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本人の“らしさ”を支えるケアが求められる
精神障害や認知症に対する支援は、「病気を治す」のではなく、“安心して暮らせる環境”を整えることが本質です。
■ 障害者福祉の法制度と実践
日本では「障害者総合支援法」を軸に、障害者への支援制度が整備されています。
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サービス例:生活介護、就労支援、居宅介護、移動支援など
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近年は「意思決定支援」「地域生活支援」が重視されている
さらに、障害者権利条約の批准を受けて、「合理的配慮」の提供が法的に義務化されました。
これは、「同じ」ではなく「平等」な支援を提供することを意味します。
■ 心理職が担う役割
福祉の現場における心理職の役割は多様です。
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アセスメント(心理検査・行動観察)
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対人関係の仲介やストレスマネジメント支援
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家族支援(きょうだい児のケア、介護者の負担軽減)
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地域連携や他職種とのチームアプローチ
重要なのは、「障害者をケアする」のではなく、**“その人の声を聴き、一緒に社会を変えていく”**姿勢です。
■ 「障害と共に生きる社会」の実現に向けて
障害理解のゴールは「特別扱い」ではなく、**“ともに当たり前に生きられる社会”**です。
そのためには次のような取り組みが必要です。
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学校・職場・地域におけるインクルーシブ教育と雇用
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バリアフリーからユニバーサルデザインへの発展
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誤解や偏見を解くための啓発活動と対話の場づくり
「障害は誰にでも起こりうるもの」という共通理解が、「自分ごと」としての福祉を根づかせます。
■ まとめ──“違い”を受け入れ、“尊厳”を守る支援へ
障害者支援とは、“できないことを補う”のではなく、“その人がその人らしく生きられる環境を整えること”。
福祉心理学は、「その人のままでいい」と言える社会の実現に貢献する学問なのです。