※本記事は、ジョン・マクレオッド著『物語としての心理療法』(誠信書房)第2章の要約および私見を交えた学習記録です。ナラティヴ・アプローチに関心を持つ初学者にも親しみやすい語り口で整理しています。
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心理学者ジェローム・ブルーナーは、人間が世界を認識する方法には二つの型があると述べています。一つは、命題的・論理的な「パラダイグマ的認識」。もう一つは、経験を語る中で世界を構成していく「物語的認識」です。
パラダイグマ的認識は、抽象的な法則に基づく科学的理解を指します。それは社会的文脈を必要とせず、日常言語ではなく形式化された命題によって構築され、曖昧さを極力排除します。一方で、物語的認識は、私たちが語り合いながら世界を意味づけていく認識様式であり、人間の営みの基礎にあるとブルーナーは考えました。
しかし、近代以降の社会では、この物語的側面が軽視され、科学的な知識や分析的な視点ばかりが重視されてきました。心理学もまた、科学的知見に支えられた学問体系として構築され、その実践である心理療法も命題的知識を土台としています。
とはいえ、人間を自然科学の対象と同じように扱うには限界があります。私たちは能動的で社会的な存在であり、それぞれの現実やアイデンティティは「語ること=ナラティヴ」によって形作られていきます。この視点が、人間を理解するもう一つの方法として提案されてきたのです。
このような物語論的な関心は、1970年代から80年代にかけて心理学や社会科学の中で確かな地位を築き始めました。心理療法においても、「物語ること」が単なる表現行為ではなく、現実を再構成しなおすプロセスとして捉えられています。
“語る”という行為そのものが、世界との関係を編みなおし、自分自身を形づくる──
本章は、そうした認識様式の豊かさと深さを再発見させてくれる内容でした。
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