※本記事は、ジョン・マクレオッド著『物語としての心理療法』(誠信書房)第2章の要約および私見を交えた学習記録です。ナラティヴ・アプローチに関心を持つ初学者にも親しみやすい語り口で整理しています。
---
ストーリーは、経験を表象する手段のひとつであると同時に、ジレンマや緊張状態を解決するための手段でもあります。ストーリーを語ることを可能にする特質のひとつは、例外的な事柄と通常的な事柄との乖離にあります。つまり、珍しく注目に値する何かが起きたという経験こそが、ストーリーの基盤になるのです。
聴き手や聴衆はナラティヴを共同で構成する際、浮かび上がったストーリーに自分なりの意味を加えたり、質問を挟んで明確化を図ったりします。こうした相互作用によって、ストーリーを語る行為にはコミュニケーションに特別な機能が付与されます。まず、不確実性や多義性を伴う世界の感覚を伝える機能が備わります。また、不調を和らげ、コントロール感や秩序感を再確立するための手段を提供する機能もあります。これは、物語が語られることを通じて、世界について統合的な解釈が再構成されることで可能となります。
ストーリーにはもうひとつ、問題解決に役立つ機能があります。それは、無秩序な経験を因果的な筋道にあてはめ、理解を促す機能です。これによって、人は「どのようにして、なぜ出来事が起きたのか」を理解できるようになります。特に、危険やトラウマにさらされた状況において、この機能は大きな効果を発揮します。
誰にとっても、戸惑うような経験はあります。ある意味で、そうした経験は、誰かに語られたり、日記などを通じて〈物語化〉されたりして初めて〈完結〉するといえます。経験をストーリー形式にあてはめることは、出来事を順序立て、意味づけるために有効な手段なのです。このように物語ること自体が問題解決の方法となります。そして、すでに存在しているストーリーを改めて語り直すこともまた、問題解決の手段となります。
ストーリーを語り直すことで、語られた事柄を新たに体験し直すことができます。つまり、語り手はストーリーの再語りを通じて、新たな経験を得る機会が与えられるのです。それは、これまで取り入れられずに残されていた経験を、ナラティヴの要素に同化させる機会となります。
---