心理学勉強記録

このブログは、心理学を学んでいる私が、日々のテキストを自分なりに解釈しながらアウトプットしていく記録です。 主に自分自身の復習用として作成していますが、心理学に興味のある方、これから学び始める方にとっても、何かしら参考になる部分があれば幸いです。

『物語としての心理療法』要約⑯ ― 第2章:認識としてのナラティヴ──ストーリーと自己感

※本記事は、ジョン・マクレオッド著『物語としての心理療法』(誠信書房)第2章の要約および私見を交えた学習記録です。ナラティヴ・アプローチに関心を持つ初学者にも親しみやすい語り口で整理しています。

 

 

 

 

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● ストーリーと自己感

 

ナラティヴの情緒的側面を強調することには重要な意味があります。というのも、近年のナラティヴ論の中には、こうした側面が見落とされているものも多いからです。そしてもう一つの理由は、ストーリーの個人的意味や、自己感との関係性において、感情や情動が中核的な役割を担っているという点にあります。

 

自己感の本質は、個人の語りによる「絶え間ない構築プロセス」にあるとされます。人は、自分が何者であるかというアイデンティティを、「自分自身について語るストーリー」を通じて形成していくのです。

 

この点について、ポーキングホーン(Polkinghorne, 1991, p.143)は次のように述べています。

 

> 「自己概念は、伝統的に一つの物──ひとかたまりの属性として構造化されてきた。」

 

 

 

たとえばロジャース(Rogers, 1951)は、自己概念を次のように定義しています。

 

> 「自己概念あるいは自己構造とは、自己に関する諸々の知覚が組織化されて一つの形をとったものとみなせるだろう。こうした知覚は、自らの意識にとって受け入れることができるものである。自己概念は、自分の特性や能力の知覚といった要素で構成されている。それらの要素とは、他者や環境に関わる自己知覚や自己概念、経験や対象と関連したものとして知覚される価値の質、肯定的ないし否定的な意味合いを伴って知覚される理想や目標などである。」(pp.136–137)

 

 

 

このように、自己を「構造化されたまとまり」として捉える考え方は、たとえば「私は誰?」という問いに答えるテスト(自己記述テスト)によく現れます。典型的な回答には、社会的・身体的属性などが並びます。

 

しかしポーキングホーンは、こうした静的な自己概念の捉え方に異議を唱えます。彼によれば、自己とは本来「生成的なプロセス」として経験されるものであり、固定された実体ではないのです。

 

この立場に立つならば、「自己感の構造」そのものがナラティヴ的である必要があるという結論に至ります。なぜなら、私たちが日々経験する出来事に一貫性を与え、意味づけるための枠組みこそがストーリー構造だからです。

 

ポーキングホーンは、自己概念を「人生のストーリーを語る自己語りの構築」として捉えています。人生にはさまざまなエピソードや人間関係があり、それらの多様性に一貫性をもたらすのがストーリーの力です。

 

このとき人びとは、文化的に蓄積されたナラティヴ(物語)のプロットを参照します。つまり、個人の語りは文化のストーリー群から素材を得て構築されるのです。

 

さらにポーキングホーンは、人生のストーリーが当人に対して「支配的に働く」点を指摘しています。ここで彼はロロ・メイ(Rollo May)の「個人神話」という概念を引用し、次のように述べます。

 

> 「神話は……人生に意味をもたらす力をもったストーリーである。」

 

 

 

この視点は、第1章で紹介された「語られた世界(narrated world)」という概念と再びつながってきます。

 

ストーリーの社会的意味を辿っていくと、文化が直面してきた根本的な倫理的・存在論的問いに答えようとする、神話的ストーリー群の存在が浮かび上がってきます。こうしたストーリーには多様な記憶が織り込まれており、そこに一貫性をもたせるために、人はそれぞれ独自の方略を用いて語りを構築していきます。

 

この点に関して、ガーゲン&ガーゲン(Gergen & Gergen, 1993)は、男性と女性でストーリーの構造に対照的な傾向があることを示しています。

 

最後に注意すべき点として、こうした「自己語り」自体が、西洋文化的な考え方に基づいている可能性があるということです。一貫した自己感をもたらす「個人的神話」がすべての文化で見られるとは限りません。むしろ、西洋的な英雄譚を重視する文化では、この傾向がより顕著に現れるのかもしれません。

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