1.何が異常で、何が正常か?
心理的問題を理解するうえで、「正常」と「異常」の線引きは簡単ではありません。
主な基準としては、以下の視点があります。
統計的基準:発生頻度が極めてまれかどうか
心理的苦痛:不安やうつなどの主観的な苦痛があるか
社会的逸脱:文化や社会規範、年齢・性別から期待される行動から外れているか
機能の低下:生活維持(食事・睡眠・清潔)や社会機能(仕事・人間関係)の遂行が困難かどうか
たとえば、本来高い知的能力と職業適応力を持つ人が、心理的問題によって単純作業しかできず、生活に不満を抱いている場合があります。この場合、社会的適応はある程度保たれていても、その人本来の機能水準から見れば「不十分」と判断されます。
こうした判断は、複合的な基準と社会文化的背景を組み合わせて行います。
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2.精神疾患とその診断
臨床心理学や精神医学では、まず問題がどの精神疾患に該当するかを分類します。
代表的な診断基準が、**DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)**です。
DSM-IV-TRでは、300以上の診断名を17分類に整理しています
症状や行動パターンを基準に照合して診断します
医療や臨床の第一ステップとして不可欠です
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3.統合失調症(Schizophrenia)
特徴:精神病症状、無気力、社会的退却、認知機能低下などにより、職業・学業・対人関係・生活能力が著しく障害されます
発症時期:18〜35歳(50歳以降はまれです)
有病率:約1%(100人に1人)
症状分類
陽性症状:被害妄想や誇大妄想、思考の混乱、幻聴など
陰性症状:感情の平板化、自発性や意欲の低下、無関心
要因
遺伝的要因:両親とも統合失調症の場合、発症率は50%
一卵性双生児の片方が発症した場合、もう一方の発症率は60〜84%と高率です
環境要因:母体の妊娠中インフルエンザ罹患、栄養失調、喫煙、都市部貧困層での生活など
治療
家族への心理教育
適切な治療によって、社会適応し充実した生活を送ることも可能です
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4.気分障害(Mood Disorders)
代表的なものには、大うつ病、双極性気分障害、気分変調症、季節性うつ病があります。
大うつ病(Major Depression)
症状:気分の落ち込み、集中力の欠如、喜びの減退、体重変化、睡眠障害、自殺念慮など
経過:一度発症すると再発しやすく、生涯で2〜3回経験することも多いです
要因:遺伝、慢性的なストレス、身近な人の死、虐待経験、ソーシャルサポートの欠如
神経生理学的背景:セロトニン、ノルエピネフリン、ドパミンの調整不全
パーソナリティ傾向:
下田光造:執着性格
テレンバッハ:メランコリー親和型性格
現代型うつ:特定領域のみ症状が出る、自分の好きな活動では機能可能
双極性気分障害(Bipolar Disorder)
特徴:躁状態(気分高揚・焦燥・多動)とうつ状態が交互に出現します
発症時期:50%が25歳までに発症します
大うつ病とは性質が大きく異なることが多いです
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🔚 まとめ:正常と異常は単純に分けられない
判断には統計・心理的苦痛・社会的逸脱・機能低下の複合基準を用います
診断にはDSMなどの国際的基準を活用します