●男根期(3歳〜6歳)
この時期、男児も女児も性的願望は生殖器に焦点化され、異性への関心が高まります。とくに異性の親に対する性的好奇心が強まります。
男の子は母親を独占しようとしますが、同時に父親の存在に気づきます。母親をめぐる競争相手として父親をライバル視するようになるのです。これが**エディプス葛藤(oedipal conflict)**と呼ばれます。
このとき男児は父親への敵意を抱く一方で、その反動として「父親に逆らえば罰せられるかもしれない」という恐怖も感じます。これが**虚勢不安(castration anxiety)**であり、「父に背いたら男根(ペニス)を切り落とされるのではないか」という不安です。最終的に男児は、母親への願望と父親への敵意を抑圧し、父親のルールに従い、父親のような大人になろうとすることで、この葛藤を乗り越えていきます。
一方、女の子は父親を独占しようとし、母親をライバル視します。そして自分にはペニスがないことに気づき、それを母親に「欺かれた」と解釈する、とフロイトは述べました。これは**ペニス羨望(penis envy)**と呼ばれる考え方ですが、男性中心的な社会観を反映していると批判も多く受けています。ただし臨床場面では、ヒステリー傾向の強い人にこの理論が当てはまる場合もあります。
・男根期の欲求充足と「男根性格」
過保護だった場合
虚栄心が強い(自分を大きく見せたがる)、プライドが高い、上品だが内気、社交的で活発など。
過剰に否定的だった場合
自己嫌悪が強い、謙遜しがち、地味で内気、孤立しやすい、恥ずかしがりなど。
・男根期やその後にみられる防衛機制
退行:不安や葛藤から守るために、より幼い行動に戻る(例:赤ちゃん言葉を使う)。
抑圧:不都合な欲求や感情を意識に上らせない(例:「怒ってない」と思い込む)。
合理化:満たされなかった欲求に理由をつけて納得する(例:「あの仕事は最初から自分に向いてなかった」)。
置き換え:本来の対象に向けられない感情を別の対象に向ける(例:上司に怒られて、家で物に当たる)。
昇華:社会的に受け入れられる形で欲動を満たす(例:性的欲求をスポーツや勉強に向ける)。
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●潜伏期(6歳〜11、12歳)
フロイトはこの時期を潜伏期(latency period)と呼び、新しい性欲の発達は抑圧されると考えました。
一方、現代精神分析では、むしろ自我と社会性が発達する重要な時期とされています。友人関係や集団生活の中で協調性を学ぶことが、その後の人生を支える基盤になるという見方です。
日本の「引きこもり」問題についても、この潜伏期の自我発達や社会性との関連が示唆されることがあります。ただし、これはあくまで一つの視点としてとらえる必要があります。
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●性器期(思春期以降)
口唇期・肛門期・男根期・潜伏期を経て到達するのが**性器期(genital phase)**です。
この段階ではリビドーが成熟した形で生殖器に集中し、異性関係を通じて充足されます。
フロイトは大人の条件を「愛することと働くこと」と述べました。これを一般化すれば、愛と攻撃という二つの基本的欲動を、いかに社会的ルールの中で健全に発揮するかということです。
現代は平均寿命が延び、ライフサイクル全体が長くなったため、この性器期に至る課題の達成も遅れる傾向があるといえるでしょう。
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📌 次回以降は「精神力動アプローチ」の続きとして、**フロイト以後の展開(ユング・エリクソンなど)**を見ていきます。