クライエント中心療法(ロジャース派)の治療目標は、うつ病や不安障害といった症状の直接的な改善や問題行動の修正ではない。目指されるのは、クライエントが本来もつ「人間的機能」を回復し、自己としてより自由に生きられる状態へと向かうことである。
そのために最も重視されるのが、セラピストの態度である。ロジャースは、治療的変化をもたらすための中核条件として、以下の姿勢を挙げた。
受容(Acceptance)
セラピストがクライエントを一人の人間として尊重し、葛藤や自己矛盾、長所も短所も含めてその存在を受け止めること。
ここでいう受容は、問題行動を容認することとは異なる。存在そのものを拒絶しないという態度である。
非審判的姿勢(Non-judgmental attitude)
クライエントの行動や思考を「正しい・間違っている」と評価しないこと。
価値判断を差し挟まず、道徳的裁定者にならない姿勢を指す。
無条件の肯定的配慮(Unconditional Positive Regard)
クライエントの感じ方や体験を条件付きでなく尊重すること。
「こう感じるのは間違っている」と修正するのではなく、その体験をまずはそのまま受け止める。
自己一致(Congruence/純粋性)
セラピストの内的体験と外的表現が一致している状態。
後に「純粋性」とも呼ばれる。作為的な専門家の仮面をかぶらず、心理的に透明であることが求められる。
共感的理解(Empathic Understanding)
共感という言葉は誤解されやすい。
単に「大変でしたね」と同調することや、「悲しかったのですね」と感情をなぞることが共感なのではない。
共感とは、クライエントの「今・ここ」での主観的体験世界を、その人の内的枠組みから理解しようとする試みである。
セラピストは、クライエントの体験の流れに注意を向け、それを言語化し、フィードバックする。
面接プロセスの核心
このような治療関係の中で、クライエントは次第に防衛をゆるめ、自らの感情のより深い層へと入っていく。
そして、
これまで曖昧だった体験を言葉にし
否認していた感情を認め
それを「自己の一部」として統合していく
この自己受容の深化こそが、クライエント中心療法の面接プロセスの本質である。
変化はセラピストが起こすのではない。
治療的関係の中で、クライエント自身が自発的に生起させるのである。
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