※本記事は、ミネルヴァ書房『福祉心理学』(渡部純夫・本郷一夫 著)をもとに学習・要約した内容です。社会的支援や福祉制度について、初学者にも分かりやすく整理しています。
■ 「家庭で育てられない子どもたち」──社会的養護の出番とは?
現代日本には、虐待や経済困窮、親の病気や死亡などにより、家庭で安全に暮らすことができない子どもたちがいます。こうした子どもたちを、家庭に代わって社会全体で育てるしくみ、それが社会的養護です。
社会的養護には以下の2つの柱があります:
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施設養護(児童養護施設など)
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家庭的養護(里親・ファミリーホーム)
いずれも、「子どもの最善の利益」を最優先にして支援を行うことが原則です。
■ 支援の現場──“衣食住”だけでは足りないもの
かつての施設養護は、食事や住まいを提供する“収容型”の色合いが強く、心理的支援は二の次とされることもありました。
しかし今日では、「衣食住の保障」だけでなく、「愛着・信頼・自尊心を育てる関わり」が重視されるようになっています。
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子どもの発達段階に応じたケア
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小規模・家庭的な環境での生活(グループホーム型施設)
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ケアワーカーとの継続的な関係形成
これらの工夫を通じて、子どもが「自分は大切にされている」と実感できるよう支援されています。
■ 里親制度の課題──“育ての親”を支える仕組みはあるか?
家庭的養護の代表格である里親制度。
本来は子どもにとって最も望ましい支援形態とされていますが、以下のような課題もあります。
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里親の数が不足している
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養育中の心理的・経済的サポートが不十分
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専門的なケアが必要な子どもへの対応の難しさ
このため、里親家庭が“孤軍奮闘”になりやすく、途中でギブアップしてしまうケースも見られます。
「家庭の温もり」を提供するには、里親自身の支援と教育もまた不可欠なのです。
■ 自立支援の壁──「18歳で社会に放り出される」現実
児童養護施設などに暮らす子どもは、原則として18歳で退所することになります。
しかし、「家がない」「頼れる大人がいない」状態で社会に出る若者も多く、自立の壁はとても高いのが現状です。
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高校卒業後すぐに生活費を稼がねばならない
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住居確保が困難(保証人がいない等)
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進学を諦めざるを得ない
こうした「社会的孤立」や「生活困窮」が連鎖し、若年ホームレスや若者の精神的疾患を招くケースもあります。
■ 「18歳以降」こそ支援が必要──切れ目ない伴走支援へ
社会的養護が果たすべきもうひとつの大きな役割は、「18歳以降も見捨てない支援」です。
近年では以下のような支援が整いつつあります:
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アフターケア事業(自立後の相談支援・家計支援)
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家庭的な居場所づくり(シェアハウスや支援付き住宅)
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定期的なカウンセリングや進路相談
子どもたちに必要なのは、“18歳で終わらないつながり”です。支援の切れ目が生まれないよう、制度と人の手の両方が求められています。
■ 社会的養護のこれから──“一人ひとりの物語”を支える
社会的養護とは、単なる「保護」ではありません。
それは、過酷な環境にある子どもたちが、自分の人生を自分で選び取るための“基盤”をつくる営みです。
福祉心理学が示す視点は、「集団としての支援」ではなく、「個別の子どもの人生と向き合う支援」です。
たとえ血のつながりがなくても、信頼関係の中で育まれる“第二の家族”のような関係性。
それを築ける社会であるかどうかが、子どもたちの未来を決定づけるのです。
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